名高い「晩春」(1949年)と「麦秋」(1951年)の間に作られた小津安二郎作品です。激しい感情が動いても表面上は穏やかな描写に終始する両作品と違って、本作は劇的な描写が充実しています。
- ノワールな黒い画面が多い。そういや、「東京暮色」(1957年)も暗かったか。
- 山村聰の荒み方が絶品。職はなく妻は以前の男を忘れていない。その鬱屈ぶり。
- 以前の男を演じる上原謙は見事なボン。
- 田中絹代が夫の冷淡さに耐えながらも並々ならぬ強情さを発揮。
- 田中絹代の妹の高峰秀子が「おきゃん」の域を越えてワイルドに活躍。
- 山村聰が田中絹代を平手打ちにするシーンは、映画史に残る激しい平手打ち。
- 山村聰と高峰秀子が暗いバーで一緒にグラスを壁に投げつける。
- 酒場の酔っぱらい、亡くした妻の妹と所帯を構えた、と山村聰に語る。それを遮って店を出て行く山村聰。
じつに緻密な作りです。。
山村聰と高峰秀子が壁にグラスを投げつけるバーには、こんな文句が掲げられていました。
I drink upon occasion, sometimes upon no occasion. - Don Quixote
グラスを投げつけるごとに、アルファベットの文字が落ちていきます。この文句、ほかの映画でも見たことがあります。この頃のはやり言葉なのでしょう。スペイン語でないのはご愛敬。「めし」か「山の音」でも見かけたはずなのに、DVDを早送りしても発見できず。
0 件のコメント:
コメントを投稿