2009/07/26

「シェルブールの雨傘」(ジャック・ドゥミ監督、1964年)



台詞はすべて歌、あふれる色彩。リアリズムとは正反対の人工的な描写です。恋人たちが徴兵をきっかけに別れるというありきたりなお話なのに、ミシェル・ルグランのテーマ音楽が流れるだけでついつい涙腺がゆるんでしまいます。

タイトルバックは、雨に濡れる石畳の歩道。それを真上から捉えた画面の上下左右からさまざまな色の雨傘が入ってきては去っていく。そこに例のテーマ音楽が流れます。これだけでうるうる。もちろん、主人公の男女たちが嘆き別れるシーンでは、なおさらうるうる。いつ刷り込まれてしまったのでしょうか。

徴兵で男が不在となり、残された女が心変わりするというパターンは、侯孝賢(ホウ・シャオシェン)の「恋恋風塵」を思い出します。徴兵が実施されている韓国や台湾ではとてもリアルなお話でしょう。フランスも、アルジェリア戦争の頃は二十歳の男が徴兵されていたわけです。

「シェルブールの雨傘」はラストが心に残ります。それぞれ別の家庭を築いた男女が、たまたま遭遇します。それも、互いの連れ合いがいないシチュエーションで。でも、わずかに言葉を交わしただけで、それぞれの家庭に戻っていく。

身重のカトリーヌ・ドヌーブを娶るのは裕福な宝石商。彼が自分の失恋の思い出を語る場面で、人のいない古いショッピングモールが映しだされます。この印象的なショッピングモールは、シェルブールでも、パリでもなく、ナントにあります。数年前も同じたたずまいでした。

付記
デジタルリマスター版の解像度は720P程度では?色は鮮やかだったけど、走査線が見えるくらいぼんやりしていて残念。

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