「死んだ人と話したい。」
クリント・イーストウッドの新作「ヒアアフター」は、死後の世界や死者との対話に向き合うことを余儀なくされた人々を巡る映画です。いつヒアアフター(あの世)に旅立ってもおかしくない八十歳のイーストウッド。そんな人が作る死の映画は、じつに味わい深い作品に仕上がっていました。
マット・デイモンが演じるのは死者の声を聞く霊能力者。本人は鬱陶しく思っているこの能力に、「死んだ人と話したい」という人たちがつぎつぎに寄ってきます。そんな想いを持つ人は多いのでしょうか。
「死んだ息子と話したい」。そう言う人にじっさいに出会ったことがあります。還暦間近のこの人は、医学生だった息子さんを亡くしていました。僧籍を取得したり、モンロー研究所という「超心理学」を奉じる団体のプラクティスに参加したり。事情を知らずに聞いたらかなり怪しい話です。
わたしが新潟で勤務することになったとき、記念に小さな観音像をいただきました。それは、いまも息子の位牌のかたわらに置いてあります。
先日、思い立って久しぶりにこの人と連絡をとってみました。息子さんの残した医学書を読み、マッサージ師の勉強をしているとのこと。これがこの人なりの供養なのでしょう。供養は死んだ人のためだけはなく、残された人のためでもあるので。
というわけで、今日、2月26日はわたしの息子の命日なのでした。