心躍る書物でした。食べ物の話は面白い。
「しかし、押し寄せる奇食の波を乗り越えてみて、わかったことがある。それは、食べ物とはこの世界そのものであり、人間そのものだということだ。」(p.10)世界のどこへ行っても、人間の喜怒哀楽の感情は共通だといいます。けれども、喜怒哀楽を表現する方法はまったく異なります。人間は何らかの型を使わなければ、行動することができません。行動を規制する型こそが、文化というものです。そして、この文化という型は、行動のみならず、行動に至らしめる思考や、行動の入力たる感覚さえも規制するのです。
食べるという人間の基本行動も、味覚という感覚も、もちろん文化に深く根ざしています。そして、食の禁忌=奇食にこそ、食にまつわる文化が先鋭的に現れるわけです。本書が面白いゆえんです。
ちなみに、わたくしの母親の実家は長野県の上伊那地方。本書で「奇食好きにとっては夢のような場所」と紹介されるところです。おたぐり(馬の腸の煮込み)、ザザムシ、イナゴ、ハチの子、まんじゅうの天ぷら、などなど。信州は山国。動物性タンパクが少ないので虫まで食べたと聞いたことがあります。
奇食の中には、肝試しや、美食の果ての悪食といったものもありますが、中には本当においしいものもあります。ハチの子の佃煮はその代表例。機会があれば、ぜひお試しあれ。独特の風味は絶品で、日本酒の肴に好適です。慣れないとビジュアルは強烈かも。
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