2008/11/10

「ランジェ公爵夫人」(ジャック・リベット監督、2006年)



見事な映画っぷりです。

公爵夫人と若き将軍との恋の駆け引き。最初は公爵夫人が優勢で、ある事件を境に将軍が優勢となり、悲劇的な結末を迎える。ストーリーだけ取り出せばただのメロドラマの上に、男女の激突が繊細な映像と音声によって濃密に描かれます。これは駆け引きと言ったら軽すぎで、まさに激突と言うべきでしょう。

安直な叙情とは終始無縁のまま、ただひたすら映画の面白さに打たれます。同じ監督の「静かなる諍い女」と同じ感興を覚えました。

たとえば、こんなシーン。

舞踏会場の隣の部屋で長椅子の左側に座る公爵夫人をカメラが捉えると、右側から将軍の声が。カメラがゆるやかにパンすると、そこに将軍の姿。また、会場から調弦の音が聞こえ、演奏が始まることを告げられると、あわただしく再会を約して公爵夫人が会場に入っていくとともに、演奏の音が聞こえてくる。このあいだ楽団は画面に現れません。

将軍役のギョーム・ドパルデュー。右足が悪く舞踏会でも踊らずに片隅に座っています。じっさいに、ドバルデュー自身、交通事故の後遺症で右足を切断して義足を使っていたとか。引きずるような歩き方と、不規則な足音が、将軍の人物描写に一役買っています。(ドパルデューは、先月、急死しました)

公爵夫人のジャンヌ・バリバールは、気品と誇りと情熱を演じます。家人は「社交界の華というにはシワが多くないか」と申しておりました。失礼であります。(バリバールと家人は同じ年齢)

そして、ミシェル・ピコリとビュル・オジェの「夜顔」コンビが、主人公二人の緊迫感と対照的な老人の重厚感を見せています。ミシェル・ピコリって、ルイス・ブニュエル作品以来、腹に一物あるような目つきに見えて仕方ありません。

ところで、公爵夫人は作中で二回誘拐されます。この二つの場面はほかの場面と異なる活劇調で描かれていて、ちょっとユーモラスです。リベット先生の違った側面が見られます。

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