百年恋歌 - goo 映画
1966年、兵役を控えた若者が、高雄のビリヤード場で働く女性と出会った。恋に落ちた彼は、休暇中にそのビリヤード場に戻ってくるが、彼女の姿はない。若者は彼女を探しにバスに乗る。1911年、遊郭に通う若い外交官と芸妓の間に流れる穏やかな想い。しかしその恋が実ることはなかった。2005年、カメラマンと歌手の出会い。惹かれあう二人だが、それぞれに恋人がいた。いずれも、スー・チーとチャン・チェンが恋する二人を演じています。
3つの挿話ともほとんどの場面が室内で展開されます。1966年篇は小さな撞球場。1911年篇は遊郭(文化サロンのような)の小部屋。2005年篇は薄暗いアパートやクラブ。どの場面でもカメラはゆっくりと動き、人物を追うときもあれば、追わずに不在の空間を見せるときもあります。狭い室内を濃密な小宇宙に仕立て上げています。
1911年篇はサイレント(無声映画)で作られすばらしい格調の高さ。2005年篇は冷え冷えとした雰囲気。それに対して、最初の1966年篇は幸福感にあふれています。監督自身のこの時代へのノスタルジーが込められているのでしょう。ノスタルジーとは二度と取り戻せないものへの灼けるような強い思いです。アンドレイ・タルコフスキーには「ノスタルジア」(1983年)という作品がありました。
チャン・チェンは端正なたたずまい。セリフの少ない(セリフで物語が駆動されることのない)ホウ・シャオシェンのスタイルにぴったりはまっています。「牯嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件 」(エドワード・ヤン監督、1991年)の少年も立派な大人になりました。
スー・チーは1966年篇ではちょいとトウがたっているものの、1911年篇では見事な優雅さです。
1966年篇では男女は最後にためらいがちに手を触れます。1911年篇では女が男の髪(弁髪)を丁寧に梳いています。2005年篇の激しく求め合う場面より、この二つの場面からはより深い強い思いが伝わってきました。
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