
男を破滅させる悪女ものの傑作の一つです。ジャンヌ・モローの悪女ぶりが徹底していて恐ろしいほど。そして、恐いけれど魅力的です。イタリアの美人女優ヴィルナ・リージも、ジャンヌ・モローの迫力の前にはきれいなだけの小娘にすぎません。十代の頃観ていたらそう思わなかったかもしれませんが。
演出は濃密です。室内シーンでは必ずといっていいほど鏡の中に人物が配置されます。また、奥行き方向に人物が配置され、登場人物の動きに合わせてカメラが移動すると会話する人が交代するなど、さまざまな仕掛けが凝らされています。
このところ集中的に映画を観ています。映画の面白さは、物語の趣向だけでなく、描写のディテールにあります。フィルムという媒体は、繊細なディテールを詰め込むことことができるキャパシティをもったものだったのです。これまでの電子映像は、繊細な描写が可能な媒体ではありませんでした。フルHD(2K*1K)でももう一息です。4K*2Kや8K*4Kあたりで形勢が変わるでしょう。写真というジャンルでデジタルカメラが銀塩カメラを駆逐しつつあるように、映画というジャンルでも銀塩フィルムが駆逐される日はそれほど遠くないようです。
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