2009/03/27

「舞台恐怖症」(アルフレッド・ヒッチコック監督、1950年)

舞台恐怖症 特別版

1950年製作のヒッチコック作品。演じること、がストーリー展開の核になっています。王立演劇アカデミーの練習風景や、マルレーネ・ディートリッヒのパフォーマンスなど、何度か舞台の場面が登場するだけでなく、舞台以外の場面でも、主要な登場人物が嘘をついたり、素性を隠して行動するなど、演じることそのものが主題となっているかのようです。また、登場人物の回想場面(フラッシュバック)が、後で嘘だったことが分かります。映像自体も、登場人物の嘘に荷担しているわけです。1951年の「羅生門」よりちょっと早いですね。

こんな見所は、ポッドキャスト番組"The Philosopher's Zone"のある回で知りました。

なお、ラストではヒッチコックらしい手に汗握るクライマックスを迎えます。そして、この場面は舞台を舞台としています。

日比谷公園の桜



もう咲き始めていますね。新潟より早い。

2009/03/22

那須、村上、新潟

那須塩原市から、郡山、会津を経て新潟に到着し、高速道路に乗ったまま村上に向かいました。家人の親戚のお見舞いです。

そういえば、ここの叔父さんは昔船乗りでした。地中海では「緑の光線(rayon vert)」を見たことがあるそうです。地中海で夕日が没する瞬間に発っせられる緑色の光芒。気象条件が合わないとなかなか見られないとか。これを知ったのはエリック・ロメールの映画「緑の光線」。

帰宅後、風邪が悪化。この冬初めて寝込みました。

2009/03/21

「宗方姉妹」(小津安二郎監督、1950年)

宗方姉妹 [DVD]

名高い「晩春」(1949年)と「麦秋」(1951年)の間に作られた小津安二郎作品です。激しい感情が動いても表面上は穏やかな描写に終始する両作品と違って、本作は劇的な描写が充実しています。
  • ノワールな黒い画面が多い。そういや、「東京暮色」(1957年)も暗かったか。
  • 山村聰の荒み方が絶品。職はなく妻は以前の男を忘れていない。その鬱屈ぶり。
  • 以前の男を演じる上原謙は見事なボン。
  • 田中絹代が夫の冷淡さに耐えながらも並々ならぬ強情さを発揮。
  • 田中絹代の妹の高峰秀子が「おきゃん」の域を越えてワイルドに活躍。
  • 山村聰が田中絹代を平手打ちにするシーンは、映画史に残る激しい平手打ち。
  • 山村聰と高峰秀子が暗いバーで一緒にグラスを壁に投げつける。
  • 酒場の酔っぱらい、亡くした妻の妹と所帯を構えた、と山村聰に語る。それを遮って店を出て行く山村聰。

じつに緻密な作りです。。

山村聰と高峰秀子が壁にグラスを投げつけるバーには、こんな文句が掲げられていました。
I drink upon occasion, sometimes upon no occasion. - Don Quixote

グラスを投げつけるごとに、アルファベットの文字が落ちていきます。この文句、ほかの映画でも見たことがあります。この頃のはやり言葉なのでしょう。スペイン語でないのはご愛敬。「めし」か「山の音」でも見かけたはずなのに、DVDを早送りしても発見できず。

2009/03/20

「流れる」(1956年)、「めし」(1951年)、「山の音」(1953年)(成瀬巳喜男監督)

木曜日の夜に家人の実家(那須塩原市)に移動。金曜日は、終日、成瀬映画を観て過ごしました。

流れる [DVD]
山田五十鈴、田中絹代、高峰秀子、杉村春子、岡田茉莉子、栗島すみ子という大女優たちが持ち味をみごとに発揮。まるで、彼女たち本人であるかのような存在感。中でも強烈なのは底意地の悪そうな栗島すみ子。

めし [DVD]
上原謙と原節子の美男・美女カップルが生活に疲れる倦怠期の夫婦を演じてもリアリティあり。ロケシーンでは大阪の街中と、南武線矢向駅前が登場。

山の音 [DVD]
平凡に見える登場人物たちが、ただ者ならぬ側面を持っていることが明らかになっていく映画の妙。「めし」と同じく上原謙と原節子が夫婦を演じ、山村聰が上原謙の父親役。ここの紹介が的確。

成瀬映画の世界にすっかり取り憑かれてしまい、なかなか寝付けませんでした。

2009/03/18

「肉体の冠」(ジャック・ベッケル監督、1952年)

肉体の冠
川に浮かぶ手こぎボート、酒場でのダンス、俳優のクロースアップや動作。ストーリーの描写は抑制的にして、ディテールは豊饒です。また、脇役の俳優たちがいい顔をしています。チンピラ、貴顕、娼婦、淑女、警察署長、馬丁、バーテンダー。皆、じつにそれらしい。とくに賤な役の人々も、賤ではあっても下品ではないのです。

2009/03/17

「気狂いピエロ」(ジャン=リュック・ゴダール監督、1965年)

気狂いピエロ
二十数年ぶりの再見。それでもほとんどのシーンを覚えていました。記憶に残る強い映像にあふれています。また再見してみると、女の気持ちがしだいに離れていく展開がなかなか切ない。ゴダールが、離婚した直後の元妻を主役にして撮ったいう下世話な興味をもって観ると、なおさら。

2009/03/16

「北の橋」(ジャック・リヴェット監督、1981年)

北の橋 Le Pont du Nord
てんで出鱈目なストーリー展開なのに、ずっと目が離せません。

活気のあるパリの中心地から殺風景な再開発中の地区まで、すべて屋外で撮影されています。街中の建物、フランス車があふれる道路、ロータリーのライオンのオブジェ、石の階段、郊外の廃墟、そこに隣接する荒涼とした集合住宅。どの風景もたいへん魅力的です。1980年のパリの記録にもなっています。

ちなみに、全場面を屋外で撮影しているせいか、ビュル・オジェ扮する主人公は閉所恐怖症という設定です。閉所恐怖症という人物設定だから屋外の場面が多くなった、という通常の発想ではないでしょう。

映像はDVDで観てもざらざらした質感です。16ミリキャメラで撮影されたのでしょうか。軽量のキャメラは屋外で機動的に撮影するのに便利なはず。また、コントラストの低いざらざらした映像は、夢の中のできごとのような本作の雰囲気に合っています。

イカれた娘を演じるパスカル・オジェにも目が釘付けです。ギリシャ彫刻のように端正な顔立ちにすらりとしたスタイル。いくどか披露される空手の所作は優雅です。

ビュル・オジェが唐突に射殺された後、パスカル・オジェが謎の男に空手で挑むラストシーン。いつのまにか男が指導モードに入って、二人の演武が延々と長回しで捉えられます。画面はときどき十字線が入ったキャメラのファインダーとなり、あたかも記録映画。パスカル・オジェはこの作品の数年後に亡くなったので、この場面は本当に記録になってしまったわけですが。

ビュル・オジェとパスカル・オジェは本当の母娘です。それにしては似ていないなあ。お母さんのビュル・オジェは、今の坂口良子に似ていると家人が申しておりました。オリヴェイラの「夜顔」では主役、リヴェットの最新作「ランジェ公爵夫人」にも出演していました。

このゆるゆるした映画は映画館で観てみたかった。映画館で映画を観る幸福は、暗闇と大きなスクリーンによって映画の中に包まれてしまうことにあります。以前は、映画館の大小を問わずつねに一番前の席に陣取りました。今では視界の8割くらいをスクリーンが占める位置に座ります。

そういえば、中学生のころ、シネラマの大スクリーンが売り物だったテアトル東京でも意地を張って最前列に座ったことがあります。これはさすがに辛かった。スクリーンの半分くらいしか視界に収まらなかったので。

2009/03/15

「エヴァの匂い」(ジョセフ・ロージー監督、1963年)


エヴァの匂い


男を破滅させる悪女ものの傑作の一つです。ジャンヌ・モローの悪女ぶりが徹底していて恐ろしいほど。そして、恐いけれど魅力的です。イタリアの美人女優ヴィルナ・リージも、ジャンヌ・モローの迫力の前にはきれいなだけの小娘にすぎません。十代の頃観ていたらそう思わなかったかもしれませんが。

演出は濃密です。室内シーンでは必ずといっていいほど鏡の中に人物が配置されます。また、奥行き方向に人物が配置され、登場人物の動きに合わせてカメラが移動すると会話する人が交代するなど、さまざまな仕掛けが凝らされています。

このところ集中的に映画を観ています。映画の面白さは、物語の趣向だけでなく、描写のディテールにあります。フィルムという媒体は、繊細なディテールを詰め込むことことができるキャパシティをもったものだったのです。これまでの電子映像は、繊細な描写が可能な媒体ではありませんでした。フルHD(2K*1K)でももう一息です。4K*2Kや8K*4Kあたりで形勢が変わるでしょう。写真というジャンルでデジタルカメラが銀塩カメラを駆逐しつつあるように、映画というジャンルでも銀塩フィルムが駆逐される日はそれほど遠くないようです。

2009/03/14

「ああ爆弾」(岡本喜八監督、1963年)

ああ爆弾

怪作にして快作です。伊藤雄之助と砂塚秀夫が刑務所の中で狂言を演じるオープニングから怪作ぶりに引き込まれます。全編、絵も音も切れ味のよいリズムにあふれていて、岡本喜八のリズムへの偏愛が感じられます。銀行の中で繰り広げられるミュージカルシーンも楽しげ。

ぎょろ目で主役を張る伊藤雄之助は「アタラント号」のミシェル・シモンに似ていますな。また、シャンソンの大御所としておもーいイメージのある越路吹雪が、扇子太鼓をどんつくと叩くだけのかるーい役で登場します。

「浮雲」(成瀬巳喜男監督、1955年)

浮雲

重苦しい大人の恋の物語。森雅之演じる男のロクデナシぶりが見事です。そんなロクデナシを追わずにいられない高峰秀子のなげやりな表情も素晴らしい。感情の機微を表す眼の動き。それを支えるかのように俳優に投じられる影。繊細な演出が全編で冴え渡っています。

成瀬巳喜男作品は今までほとんどご縁がありませんでした。これは観なくてはならないと、思いを新たにした次第。

2009/03/13

「からっ風野郎」(増村保造監督、1960年)

からっ風野郎

三島由紀夫が主役を演じる作品。チンピラやくざを楽しそうに演じています。

企画はキワモノながら、そこは増村保造、意外と面白い作品に仕上げています。ノワールな黒みの多い画面に、切れ味のよいアクションつなぎでテンポよくストーリーを展開。ふてぶてしい迫力を放つ若尾文子、ニヒルにかっこいい船越英二など、プロの俳優陣が的確な演技で素人くさいセリフ回しの三島由紀夫を支えます。

三島由紀夫の肉声はこちらで。

2009/03/12

「アタラント号」(ジャン・ヴィゴ監督、1934年)

29歳で亡くなったジャン・ヴィゴの長編2作目にして遺作。20数年ぶりの再見です。新婚の男女のすれちがいのお話に、ミシェル・シモン演じる老船乗りが深みを与えています。前半ではイカれたジジイぶりを発揮し、後半では侠気を見せる。ミシェル・シモンは見た目は頬もたるんでいて爺サマそのものですが、この頃40歳前後だったとか。

2009/03/09

Rolleiflex3.5E



オーバーホールを終えたカメラでぼちぼち撮影しています。これは、Rolleiflex 3.5E(Planar f3.5/75mm)の作例。66版の正方形フォーマットは、久しぶりで新鮮でした。そういえば、Ricoh GRシリーズにも正方形モードがあります。

2009/03/08

村治佳織ギターリサイタル(りゅーとぴあコンサートホール)

じつに端正な演奏でした。スペイン・南米の作曲家の作品では、そこが物足りなく思えてしまうのかも。「バッハのカンタータ156番より"シンフォニア"」は、端正な演奏によく合っていました。

「野獣の青春」(鈴木清順監督、1963年)

野獣の青春 [DVD]

1963年製作の宍戸錠主演作。鈴木清順のスタイルを極めた「東京流れ者」(1966年)や「殺しの烙印」(1967年)に比べると、普通のアクション映画です。しかも、当時風のもったりしたテンポの。とはいえ、ヤクザの事務所が映画館のスクリーンの裏にあるなどといった面白いディテールは数多く散りばめられています。

「オーストラリア」を観た後、「モーターサイクル・ダイアリーズ」と一緒にDVDを借りて、続けて観てしまいました。そのせいか、夜中、頭が冴えて寝付けませんでした。

2009/03/07

「モーターサイクル・ダイアリーズ」(ウォルター・サレス監督、2004年)

モーターサイクル・ダイアリーズ 通常版 [DVD]

これは、ベニチオ・デル・トロのゲバラ二部作より感銘深い映画です。アルゼンチンの23歳の医学生が友人と決行した南米旅行を描くロード・ムービー。女たち、逃亡中の共産主義者夫婦、農民、ハンセン病患者たち、といったまざまな出会い。この旅は23歳の医学生を決定的に成長させたのです。ここから、28歳の革命までわずか5年。

「オーストラリア」(バズ・ラーマン監督、2008年)

大味な大作でした。牛の大群や、日本軍の襲来といったスペクタクルシーンは、文字通り視覚的に面白いかったけど。

先住民族に敬意を払い、また、主役のお二人がポリティカルにコレクトという設定も、いまどきのお約束ですね。

ニコール・キッドマンが気合いを入れてドレスアップするお姿は、英国風というのかちょっとダサ目のセンス。また、全編ほとんどカウボーイ姿で通すヒュー・ジャックマンが、パーティの場面だけ正装で登場するとただの優男になってしまうのも面白いところでした。

2009/03/03

「チェンジリング」(クリント・イーストウッド監督)



クリント・イーストウッドの最新作です。

物語をたんたんと、かつ、丁寧に描く。この十数年、変わらぬスタイルが本作でも貫かれています。この抑制された描写が、物語を力強いものにしています。もちろん、抑制された描写が力強くなるのは、描く力が伴っていればこそ。たとえば、主人公が収容される精神病院や殺人者の農場の場面。凡百のスリラーには及びもつかぬ怖さに震えます。

アンジェリーナ・ジョリーは熱演。ただ、1920年代風なのか、アップになったときの濃厚メイクには違和感がありました。ま、美人女優の汚れ役ですかな。

物語は実話(ウィキペディアWikipedia)に基づいています。映画でちょいとドラマチックすぎると思ったところは、みな創作でした。また、映画で省略された事実もいくつかあります。もちろん、本作は、子供を失った母親に的を絞って物語を貫く芯を作っています。ちなみに、関連リンクを見ると、本作で取り上げた以外にもさまざまなドラマが垣間見えます。

2009/02/22

「ボルベール<帰郷>」(ペドロ・アルモドバル監督、2006年・スペイン)

ボルベール

陽光が降り注ぐ墓地。数十人の女たちが墓石を掃除しています。そして、吹き抜ける猛烈な風。このオープニングから見事な映画っぷりに引き込まれます。

映画を動かすのは女たちです。母娘、姉妹、母の母、隣人が、濃厚な関係で結ばれていることが、物語の進行につれて明らかになっていきます。女たちが、互いに深く結ばれていることを再認識する物語といってもいいでしょう。殺人の事後処理や幽霊のエピソードはかなり無理のある物語展開なのに、映像と演技の強さで納得させられてしまいます。

ちなみに、本作では女たちが頬を寄せ合って音を立ててキスする場面が多いように思いました。彼の地の習慣とはいえ、濃いなあ。

2009/02/20

ごきょうだいですか?

東京は八重洲の洋食屋での出来事です。

古びて重厚ささえ感じる店内には、ボーイさんたちに混じってお年を召されたご婦人が二人フロアを回っています。落ち着いたたたずまいは、おそらくオーナーでしょう。そして、どことなしか風貌が似ています。

片方の人がテーブルに近づいてきたとき、思い切って「ご姉妹ですか?」と尋ねてみました。すると、一瞬むっとしたような顔をして口をきいてくれません。

もう片方の人にも聞いてみました。「ご姉妹ですか?」

すると朗らかに答えて曰く、「あれは娘なんですよ。私、今年で八十四。二十歳のときの子供なの。」いやぁ、ご婦人の年齢は難しい。

その後、テーブルの傍らで歓談することしばし。古びたお店もさることながら、お店とともに年月を重ねてきたお母様も名物に違いありません。

2009/02/15

「私の鶯」(島津保次郎監督)

昨日の「ホットファズ」に続き、今日は「私の鶯」を観ました。



どちらも、にいがた国際映画祭の上映作品です。いつもはがらがらの(失礼)シネウィンドが満席でした。

その後、オーバーホールの終わった水没カメラ・レンズを受領。全体に以前より動作が快調で、きれいになりました。災い転じて福と成しておきましょう。

2009/02/14

「HOT FUZZ/ホットファズ」(エドガー・ライト監督、2007年・英国)

ホット・ファズ~俺たちスーパーポリスメン!~ [DVD]公式サイト

イギリスらしいコメディセンスです。ひとことでいえばブラック。「モンティ・パイソン」にも通じます。「モンティ・パイソン」が彼の地で放映されていた頃、この世に生まれたエドガー・ライトという監督。その精神をしっかりと受け継いでいます。

主役の二人以上に、爺さん・婆さんたちが大活躍するのが、またイギリスらしいところ。

ストーリー展開はちょっともったりしているけど、目まぐるしいカット割りが映画好きっぽさを感じさせます。

2009/02/08

「チェ 39歳別れの手紙」(スティーブン・ソダーバーグ監督)



チェ・ゲバラの生涯を描く二部作の後編です。

キューバ革命前と革命後が交錯した前編と打って変わって、ボリビアでの戦いが時系列でたんたんと描かれます。劇的な高揚がまったくないたんたんぶり。それでも、しかもゲバラが死を迎えることが分かっていても、最後まで目が離せません。

ヒーローであるべきゲバラは、徹底してヒロイックには描かれません。薬を失って喘息に苦しむゲバラの呼吸音(ラッセル音)は、自分も喘息持ちなのでいたたまれないほどの生々しさです。

革命に成功したキューバでも、不首尾に終わったボリビアでも、ゲバラは同じように生きた。それを伝えたいという意欲は伝わってきました。

2009/02/07

十番町付近

平成の街のなかに、ぽつんぽつんと昭和が残っています。









Ricoh GR DIGITAl II

2009/01/31

「The Who アメイジング・ジャーニー」(マーレイ・ラーナー監督)



イギリスのバンド The Who のドキュメンタリー。けっこう打たれました。

バンドの結成・デビュー、My Generation、Tommy、キース・ムーンの死、解散・再結成、ジョン・エントウィッスルの死。辿ってきた道のりは平坦ではありません。インタビューで過去を語るピート・タウンゼントの口調には苦々しさも覗きます。

キースとピートが死んだ後に残ったのはロジャー・ダルトリーとピート・タウンゼントの二人。対立することが多かった二人がついにお互いを認め合うに至る場面では、ちょっと涙腺が刺激されました。

若い頃の演奏には勢いがあふれ、ジジイになってからの演奏には懐の深さがあります。ローリング・ストーンズの爺さんたちは若いときのスタイルをストイックに維持していますが、The Whoの二人はハゲて体型が緩んで地味なものを身にまとっていても、枯れないジジイぶりを発揮しています。自分が目指すとしたらこちらですかね。いや、ハゲて体型が緩むかも知れないので。

ちなみに、The WhoのアルバムはLPで"Live at Leeds"と"Odds and Sods"(1974年のベストアルバム)を持っているだけ。どちらも、何十回も聞いた愛聴盤です。

2009/01/26

芸術新潮2月号・特集「なるか、世界遺産 国立西洋美術館のすべて」




ル・コルビュジェ設計の建築物の一つとして世界遺産に登録される(かもしれない)上野の国立西洋美術館。この美術館が完成するまでの顛末が面白い読み物になっています。日本側を振り回すコルビュジェの大物ぶりがなかなか。

この美術館は、松方幸次郞という個人が収集したコレクションを収容するために建造されました。第二次世界大戦終了までパリに保管されていたコレクションをフランス政府が日本に寄贈(返還)する条件が、美術館を用意することだったのです。松方が美術品を買い集めるときのお大尽ぶりがなかなか。

また、ルーブル特集のときよりはぐっとコンパクトながら、収蔵品、キュレーター、建物の詳細まで、いろいろ行き届いた紹介がまたなかなか。

2009/01/25

「ノン子36歳家事手伝い」(熊切和嘉・監督)



全体にもう少し深い練り込みがあったらいいな、という印象を持ちました。坂井真紀の主人公、星野源の年下君、鶴見辰吾の元夫、斉木しげるの父親、宇都宮雅代の母親、新田恵理のスナックママなどなど、せっかく役者も揃っていることですし。

ちなみに、本作はPanasonicのAG-HPX555というディジタル機材で撮影されたそうです。デビット・リンチの「インランド・エンパイア」よりはずっと映画らしいけど、ハイライトや輪郭線はやっぱり電気映像って感じですかね。静止画像ではディジタルが銀塩に勝っているけど、映画はまだまだ。

2009/01/24

冬の光

昨夜から雪が降っています。新潟のどんよりした冬空を見ていると、関東の柔らかい陽の光がなつかしく思われます。







大晦日、実家近くで撮影。カメラはKONICA Hexar。なお、水没したカメラのオーバーホール料金は「それなり」でした。ただいま修理中。

2009/01/22

「青い鳥」(中西健二・監督、2008年)



ひりひりするような緊張感の続く作品でした。まず、阿部寛が演じる中学校の教師がどもりながらしゃべる(重松清の原作の設定とのこと)ときの沈黙に気持ちが張りつめます。くわえてこの教師が、先生、生徒、親からなる学校という集まりの中で徹底して異物であることが映画全体を貫く緊張感を生み出しています。ありきたりな言葉を発する大人たちとかけ離れた異物こそが、生徒の心を震わせるという物語です。

じつは、本作の監督は大学の映画サークルで一緒だった人物です。映画界で20年を経てついに監督デビュー。おめでとう、中西。

(新潟ではDeKKY401のユナイテッドシネマで1月30日まで)

2009/01/19

青空文庫 on iPhone

iPhoneで青空文庫を読むためのリーダーを導入しました。あまたリリースされている同種のソフトの中で、たまたま選んだのは SkyBook



当方が必要とする機能は揃っています。
  • 明朝体、縦書き、ルビ表示
  • ヘッダ・フッターなしで本文をフルに表示
  • 作品ごとに読みかけページを自動保存
  • 青空文庫からの直接ダウンロード
大菩薩峠」もこれで読んでいたら、快適だったことでしょう。

残る問題はiPhoneのバッテリ寿命が短いことです。これはiPhoneが抱える宿痾で、外部バッテリを使う以外に解決策がありません。

2009/01/18

快晴



新潟市内は朝から快晴。角田浜までひとっ走りしました。気温は4度。体が冷えないようにひたすら走ります。

国道402号では、軽ワンボックスの後ろをぴったり走るピストを見かけました。すっとワンボックスの横に出たかと思うと渾身の力でもがきます。速い。弥彦競輪の出場者でしょうか。

内野漁港のあたりでは、水揚げしたタコをさばいて並べていました。内野の生ダコが食べられる季節です。

2009/01/17

「チェ 28歳の革命」(スティーブン・ソダーバーグ監督)



チェ・ゲバラの生涯を描く二部作の一作目。キューバ革命の勝利で終わります。もともとが一本の映画として作られたので、前編が終わったという印象。

ジャングルでの戦いと生活を描く場面の間に、後の米国訪問・国連演説の場面がモノクロ映像で挿入されます。米国訪問時のインタビューで発言した内容と、戦いの場面が微妙に連動する趣向。

ジャングルの場面は、ゲリラ戦の日常がたんたんと描かれているだけなのに目が離せません。面白い。逆に、サンタ・クララ市の戦闘場面は普通のスペクタクルになっていて冗漫に思えました。

ところで、ゲバラを演じるベニチオ・デル・トロは、目つきや鼻の下が古谷一行に似てますな。

Garmin Edge800を新調

5年間の酷使で満身創痍のGarmin Edge305。ついに、Edge800の導入に至りました。 楽しい選択で迷ったのは他社のサイコンではなく、iPhone。Bluetooth接続の スピード/ケイデンス・センサー や、 心拍センサー を導入して、 Cyclemeter な...